フリーランスとしての道を歩み始めた私にとって、最初の個人案件は大きな期待と喜びに満ちていました。しかし、その喜びは長くは続かず、苦い現実に直面することになります。契約書を交わさず、無償で協力を申し出たことが、後々どれほど大きなリスクを伴うのかを痛感しました。これは、フリーランスとして独立する際に陥りがちな「甘い見通し」がもたらした結果でした。
このストーリーは、私が経験した挫折や苦悩、そこから学んだ教訓を通じて、これからフリーランスとして活動を始めようとしている方々、また同じ道を歩んでいる方々に向けて書かれています。お互いの成長や成功を支えるためにはどうすればいいのか、この実体験がその一助となれば幸いです。
私の失敗談が、「自分には関係ない」と思われるかもしれません。しかし、同じような状況に陥った際に思い出していただき、何らかの参考にしてもらえることを願っています。そして、フリーランスとして仕事をする上で大切なことを一緒に見つけていきましょう。
第2章: 他者の介入 - 突然の方針転換がもたらす広がる溝
「突如現れた第三者: 信頼が壊れる瞬間」
プロジェクトが進捗8割を迎えた頃、突然の連絡がありました。「今後、このプロジェクトには他の方も参加していただくことになりました」。クライアントから一方的に告げられたその一言に、私は一瞬何が起きたのか理解できませんでした。
「なぜこのタイミングで?」と疑問を抱きつつも、状況を把握するため、相手の説明を待つしかありませんでした。ですが、説明は驚くほどあっさりとしたものでした。「信頼している方なので心配いりません」という言葉とともに、詳細な情報は一切ありませんでした。
突如現れた“別の協力者”
その“第三者”は、クライアントの知人で、Web制作に多少の知識がある人物だと言います。「手伝ってもらえれば、より良いものが作れる」とクライアントは言うものの、これまで8割近くの進捗を一人で担当してきた私には、突然の方針転換がどうしても納得できませんでした。
- 進行中のデザイン案はすでにクライアントの確認を経ており、調整も終盤。
- コーディングの一部は試運転が可能な状態で、ほぼ完成に近い段階でした。
それでも、その人物が「全体の監修」や「細部の修正」を担当するという形で介入してきました。
他者の介入がもたらす混乱
第三者の参加により、プロジェクトは一気に混乱に陥りました。
- 作業方針の曖昧化
彼の意見はこれまでの方針と食い違い、既存の作業を覆すような提案ばかりでした。
例えば、「メインビジュアルはもっと派手に」「レスポンシブ対応は後回しで」など、進行済みの部分を無視する発言が目立ちました。 - 責任範囲の不明確化
誰が何を担当するのかが曖昧になり、タスクの進行速度が急激に低下しました。
私が担当した部分に新たな修正案が出されるたびに、再びクライアントの確認を取るという無駄なプロセスが増えました。 - 信頼関係の崩壊
クライアントは「効率的に進めたいから」と説明しましたが、私への事前相談が一切なかったことが大きな溝を作りました。この出来事は、「自分の意見は軽視されたのではないか」という疑念を私に抱かせました。
感情の葛藤
最初は「プロジェクトのため」と自分に言い聞かせました。しかし、次第にフラストレーションが溜まり始めます。作業が遅れるだけでなく、私が積み上げてきた努力が第三者の介入によって無意味にされるように感じたのです。
「自分一人で進めていた方がスムーズだったはずだ」
「なぜこの段階で他人を入れる必要があったのか?」
そうした疑問と怒りが心の中で渦巻き、モチベーションは日に日に低下していきました。
教訓: 事前合意の重要性
この経験を通して、私は強く学びました。
- プロジェクト開始前に、クライアントとの明確な合意を取ることの重要性
「第三者を途中で参加させる場合は必ず事前相談する」という条件を契約書に明記すべきだったのです。 - 進行中の作業方針を守るための明確なルール
途中で意見が変わったり、新しい参加者が増えた場合の対応策をあらかじめ決めておくべきでした。
プロジェクトのゴールが見え始めた時期に、信頼が揺らぎ始めた私は気づきます。さらに大きな問題が背後で進行していたことに…。「クライアントが二重依頼をしていた」という衝撃の事実が、次章で明らかになります。